1995.04  ARTICLE
MdN 1995年5-6月号インタビュー Artist and Art Work

Artist and Art Work
MdN 1995年5-6月号 記事

1987、8年ころにMacintoshに出会ったのですが、ハイパーカード上で白い背景に黒い文字や絵が動くのを見て、これは紙に印刷されたものと同じグラフィックデザインとして、コンピュータも私の仕事になりうると感じました。ただ始めはグラフィックには全然使っていなかったのです。ファイルメーカーで500件くらい住所を打ちこんで入力の練習をしたりしていました。それから1年ほどたってIllustratorなどを使いだしたのです。カラス口は知らないけれどロットリング世代ですから、正方形とか細い線が自由につくれる環境は100万倍仕事が早くなった気分でした。最初からMacintoshでデザインしている人にはわからない喜びです(笑)。 Macintoshのデータそのものが作品だというのも一つの考え方ですが、それをプリントアウト(印刷)したものが作品だととらえることも私にとっては重要です。もちろん反射光ですから、ふつうに印刷したら色の幅は狭いですが、そのかわり紙の質感がありますし、またインクを何回も重ねればすばらしい効果を生みます。今回番画廊の個展「Invisible Shape」のために制作した作品でおもしろかったのは、四角いピクセルのディテールと紙のディテールを重ね合わせることによる効果でした。オリジナルの写真にPhotoshopでさまざまなエフェクトをかけるのではなく、あくまでも素材を生かして色変換、合成といった方法をとっています。デジタルデザインの表現力をみせるのではなく、グラフィックデザイナーの視点で制作していくのが、いまのテーマだからです。もちろん、これがCD-ROMなどになってインタラクティブにクリックするだけでどんどんカタチや色が変わったりしたら楽しいだろうと思っていますが、いまはそれを我慢しています(笑)。 文字はグラフィックデザインのいちばん大切な要素です。書体の数、組版上の制約など不自由な部分もありますが、デジタルの可能性のほうがそれに勝ります。仕事のしかたをもう一度ベーシックにしようと思ったこともあるので、書体が少なくてもよかったのです。今は100パーセントMacintoshで制作しています。グラフィックの世界では、表現する内容は別にして写植や版下を紙の上で組み合わせていくという制作上の制約があり、また紙を媒体とする印刷という方法に大きな限界がありました。それがコンピュータのおかげで新しい環境が整ってきたわけです。 いまは、デジタル・タイポグラフィにとても興味があります。また一方で、自分がニュートラルなコミュニケーションのフィルタになってデザイン、ディレクションすることに醍醐味を感じてもいます。あらゆるメディアが融合していく時代のなかで、グラフィックデザインがやっと本当の自由をもちえるようになったと実感しているのです。これからの環境のなかでグラフィックデザインをやっていけるということが楽しみです。最初からデジタルでデザインを始めたわけではないので、タイポグラフィや日本のグラフィックデザインの伝統を新しいメディアのなかに置き換えていくことが私の役目だと思っています。(談)