2002.09  ESSAY
大阪府建築士会創立50周年記念誌 都市の情報デザイン

都市の情報デザイン
大阪府建築士会 創立50周年記念誌
文/杉崎真之助

デジタル技術を前提としたデザインが可能になった今、私はグラフィックデザインを情報の建築と位 置づけています。以前のグラフィックデザインの現場では、1ミリのラインはケント紙の上のインク の線として記述されていました。現在では、それは0と1の数字で表現されます。これ は単に図面をコンピュータで制作するということではありません。点から線、平面 、そして立体へとあらゆる視覚要素が数字という情報によって構成されるようになった ということです。デザインを情報を構築することと捉えてみると、その記述方法が物 質(アナログ)からビット(デジタル)に変わったことが、まったく新しい可能性と環境をグラフィックデザインにもたらしたのです。建築は、図面 によって記述されたデザインを鉄や石といった物質の構造に置きかえます。コンピュータで設計されても建設工事の方法は従来と変わりません。グラフィックデザインでは、文字や図像で構成された原稿そのものが、直接紙やモニターに投影されます。グラフィックスがデジタル化されるということは、視覚情報それ自体が物理的制約から解き放たれることを意味します。いわば0や1といった数字の材料から直接家ができてしまう、という感じでしょうか。距離や時間を超えて視覚要素の交換 ができる環境がグラフィックデザインに革命的な状況を作りだしたのです。全地球が情報ネットワークで接続され小さくなりつつある今、豊かで多様な建築が集積された都市に、ますます人は引きつけられます。そのためには都市のコンテンツ を魅力的に情報化する編集能力が不可欠です。都市計画や環境デザインをハード面 のみで捉えるのでなく、街角のサインの美しい統一感、完成度の高い都市のビジュアルアイデンティティ、さらには、訪れる人のために都市の印象というものをデザインするという発想が必要になってきます。情報や印象の都市計画が必要です。グラフックデザインは都市が発信する情報の根幹にかかわる仕事であると私は考えます。