2006.09  LECTURE
DAS50周年記念シンポジウム

DAS50周年記念シンポジウム


テーマ「守・破・離」

杉崎真之助です。
DAS50周年ということでお呼びいただきましたが、私はDASより4つ年上で、30年余りグラフィックデザインに関わっています。

●自己紹介
70年代、20歳前半、デザインよりもギターが大好きでした。


80年代、30歳のころ、烏口とカッターナイフに熱中していました。


90年、40代を前に、バブル経済の大騒ぎの後でコンピュータに出会い、コミュニケーションの世界観が変わりました。


さて2007年、50代の私は、コンピュータを使い始めて15年以上を過ごし、本日ここに座っています。




1 グラフィックデザインはコミュニケーションをデザインすること
これは書物の上の情報です。

これはコンピュータに表示された情報です。

これは情報それ自体です。

グラフィックデザインは印刷をベースとして発達してきました。
印刷物の本質は、紙やインクなどの物質ではなく、紙の上に刷られた「情報」にあります。

グラフィックデザインは、ファッションや建築、プロダクトなどとは違い、空間や物質に依存しない情報のデザインなのです。

情報そのものに物質性はありません。そういう意味でデジタル情報は グラフィックデザインにとって大変扱いやすいメディアであると言えます。 情報のやりとり、すなわちコミュニケーションを表現することのすべてがグラフィックデザインです。

グラフィックデザインでは何をどうコミュニケーションするかが重要になってきます。 見映えを整えることではなく、問題点を見つけ、それに答えを出すことです。


2 コミュニケーションの混乱
近年、デジタルテクノロジーに依存するコミュニケーションが多くなりました。

都市交通においては誘導サインではなく、携帯のGPS機能を頼りにします。 また、複雑な道路標識よりもカーナビのほうが役に立ちます。



これは六本木ヒルズの現在のアイコンです。


これは六本木ヒルズができたときの地下鉄の駅のサインです。


近代的な地上のイメージとは裏腹に、歩行者に提供される情報が混乱しています。

ここにキヨスクがあるとしましょう。
店員さんにお客さんがトイレの場所を聞きました。


問合せが多いので店員さんが気を聞かせてトイレのサインを貼り出しました。


そのうち貼り紙がどんどん増えて、歩行者が必要とする情報が見えなくなりました。


実はこういった光景はどこにでも見受けられます。
公共空間の中で体系のない場当たり的な対応の集積が混乱を招いているのです。

3DやCGといった表現方法はますます発達していますが、その裏でコミュニケーションデザインの質という問題が忘れられているのではないでしょうか。果たしてテクノロジーはコミュニケーションの役に立っているのでしょうか?

3 引き算のデザイン
こうした傾向に対して、いろんな表現を足していくのではなく「引き算をする デザイン」が求められます。
コミュニケーションデザインには、発する側と受ける側があり、決して一方通行ではありません。何らかの反応を計画するという意味で「インタラクションデザイン」なのです。





4 「守・破・離」とグラフィックデザイン
「守・破・離」を個人のデザインとしてとらえると:
守 デザインの型(方法、様式)を知り
破 新しい試みを経験し(適応、実践、試み)
離 自分独自の世界を完成することといえます。

歴史の軸でデザインをとらえると:
守 人類の歴史の中で印刷の歴史や芸術表現、情報伝達、知識蓄積の知恵、
様式、方法を知り
破 コミュニケーションの方法論を同時代の文化、経済、市場の中で試し
離 本質的なコミュニケーションを極めることのダイナミックな行為であるといえます。





5 新世紀の提言
時代と共に磨かれていくのが、デザインです。
デザインとは時代を変えることではなく、時代に気づきを与える行為であるといえます。
つまり「欲望」や「流行」を表現することではなく、
時代の文脈を知り「価値」や「感動」を発見することです。
「守・破・離」において21世紀は、破から離への時代であると思います。